8. 口約束はあってないもの (九弁←ヒノ)
「ねえ、弁慶」
「何ですか?ヒノエ」
叔父上の綺麗な琥珀色の瞳がオレを認める。
小さい頃からオレを魅了して止まない、美しい瞳。
そのまなざしが欲しくて、何度気を引こうとしたか、もう忘れた。
「お前は昔熊野で交わした、二人だけの約束を覚えているかい?」
オレはまだ小さくて、お前は子供の戯言かと思ったかもしれない。
だけど、オレは本気だったんだぜ?
いつでも、いつだって。
『ねえ、べんけい』
『何ですか?ヒノエ』
『おおきくなったら、オレとけっこんして?』
『……いいですよ。大きくなっても、君の心が変わらなければ…』
「…さあ、どの約束でしょうね」
弁慶は覚えてるのか覚えてないのか、判断がつかない微妙な表情をして、オレから目を逸らした。
「オレの気持ちは、あの頃から変わんないんだけど」
「…………」
何も言わないってことは、覚えてるってことか。
ふうん。
口約束はあってないものにしたいってことかな。
…いいよ、お前が忘れたいんなら、アレはなかったことにしてやるよ。
その代わり、全力で源氏の総大将から奪ってやるから、覚悟してな。
オレの本気をみせてあげるよ。
弁慶、お前とお前の御曹司だけにね。
END
火がついちゃった感じで。物語はここから始まる…?
配布先:0520様
http://www.cc9.ne.jp/~nagihamu/0520/0520.htm
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