決意    Harukanarutokinonakade3:Kurou×Benkei 2009.06.27UP
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「俺も中学校へ行きたい」

小学校4年に進級した始業式の翌日、俺は朝食の席に着くなり、母親にそう告げた。
昨日から一睡もできずに考えていたことだ。

昨日から、慶は中学生になり、朝は迎えに来ない。
帰り道も、もう慶と共に歩くことはない。
俺は小学校に一人取り残された気分になった。

「あと3年すれば行けるわよ」

事も無げに言われる。
そんなこと、わかっている。
だが、今でないとだめなんだ。だから言っている。

…気がつけば、また目から涙が出ていた。

母親は困ったように俺をみている。
慶が関係してることで俺が涙を見せるのは日常茶飯事だ。

「九郎。慶くんと離れたくないのはわかるけど、世の中できる事とできない事があるのよ?」

…それも知っている。わかっている。
十分承知の上で言っている。


慶が中学校へ行く。
それは、違う学校へ通うということだ。
俺は共には行けない。

以前のように、いつも一緒にはいられない。
それが辛いんだ。
ならば、俺が中学校へ行くしかないではないか。

「あなた、小さい時から慶くんだけが大事よね」

「なっ…」

ふいに図星をつかれて返事に詰まる。
そうだ。俺はあいつだけが大事だ。
もうずっと以前から…。

「あの一件があってから、あなた急に大人びちゃって、母さんたち心配してたのよ。
でも余計な心配だったみたいね。そんな無茶なこと言い出すくらいなら、十分子供だわ」

…何か馬鹿にされた気がする。
俺が子供だと言いたいのか?
元服もした列記とした武人だ。
馬鹿にするにも程があるぞ。

「いい?九郎。慶くんがどんなに可愛く見えても、男の子なのよ。あなたも男の子。
女の子にしなさい。男の子同士じゃ結婚できないじゃないの」

「け・け・結婚?」

どうしていきなりそこまで話が飛ぶんだ。

「あーらまあ、真っ赤になっちゃって、可愛いじゃないの」

「ばっ馬鹿にするなっ!」

「ふふっ、こんな話で照れるなんて、まだまだガキね」

母親はそんなことを言いすてて、鼻歌を歌いながらどこかへ行ってしまった。
俺は脱力するのを感じた。




結婚…など、考えたこともなかった。
そうか、あの頃とは違うのだな。

あの頃は、武家の男として跡継ぎを作るのは大切な勤めだった。
俺だとて、兄上から話を持ち出されれば、見知らぬ女を北の方として迎えることもあったかもしれん。
だが、それと弁慶の事はまったく別次元の話で、いつまでも傍にいてくれるものと思っていた。
それゆえ、こだわってなどいなかったんだが…。

そうか。
この世界では違うのか。

制度になどとらわれてやるつもりはないが。
…茨の道なのだろうな。

弁慶
弁慶

未だ、お前の気持ちを聞きだせずにいるんだが、俺はもう決めたんだ。
二度とお前を離さない。俺のこの手で、幸せにしてみせる。
だから俺を選んでほしい。

俺たちの行く末は茨道かもしれない。
だが、弁慶を亡くして生きた、あの大陸での日々よりは辛くないだろう。
あの虚ろな日々を思えば、何だって乗り越えられる。

隣にお前がいるんだ。
――それだけで。








END


 タイトルと内容が合ってない気がするのはご愛嬌で…。


 
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