覚醒2    Harukanarutokinonakade3:Kurou×Benkei 2009.06.07UP
 Index 遙か3テキストリスト 設定と目次 覚醒1 覚醒2 覚醒3 Webclap


「うっ…」
先ほど木にぶら下がった時より強い痛みに、九郎は目が覚めた。

ここはどこだ…?
首をめぐらせて辺りをみた。どうやら地面に着地はしているようだ。

…そうだ、慶ちゃんは…。

痛みで動きの鈍い体を起こし、辺りを見回した。
そして少し離れた先に、血だらけで倒れている慶を見つけ、目を見開いた。

「けい…ちゃん…?慶…ちゃん!けい…!」

九郎のぶら下がっていた木だろうか。慶の太ももに突き刺さっているのが見えた。
かけよって頭をそっと抱き寄せる。
その白い顔はいつもより更に青白くて、意識がない。

九郎はもうどうしていいのかわからなかった。
このままでは慶が死んでしまう。
目の前が真っ暗になった。


「わあああああああああああ」


九郎自身、わけがわからなくなって、泣き叫びはじめた。

しばらくして、激しい耳鳴りと頭痛が九郎をおそい、
叫び声を上げ頭を抱えて辺りをのた打ち回った。

ふいに痛みが消え、動きを止めると…
たくさんの記憶が頭の中に入り込んできた。


…正にこの時、九郎は思いだしたのだ。


自分が、源九郎義経であったこと。
源氏の、兄上の為に戦っていたこと。
地の青龍として、八葉だったこと。

幼い頭に入りきるのかと思う程、一度にたくさんの事を思い出した。

武蔵坊弁慶を愛していたことも―。
その弁慶と離れ離れになり、二度と会えることなく寂しく命を落としたことも全部だ。

しばらくの間、呆然としていたが、痛みで我に返った。
…そうだ、弁慶は。

九郎にはひとつの予感があった。
この幼馴染の慶は、己が愛したあの武蔵坊弁慶の生まれ変わりに違いない。
この胸をいつも占め、欲してやまないのはあいつしかいないのだから。

「弁慶、弁慶、大丈夫か?」

声をかけてみるが、やはり意識はないようだ。
ひどい焦燥が九郎の心を貫く。

…焦るな、九郎。と自分に言い聞かせ、なるべく心を落ち着かせる。
あの時は助けられなかった。…今回は必ず助けてみせる。
絶対にこの手は離さない。

まずは、止血だ。
服を切り裂き、慶の怪我をしている足の付け根あたりをきつく縛った。
慶をもっと平らな所へ寝かせてやりたかったが、7歳の体では10歳の体をどうすることもできなかった。

はがゆい気持ちが九郎を支配する。だが、今は落ち込んでいる場合ではない。事は一刻を争う。
助けを呼ばねば。九郎は人を探して、歩き始めた。




しばらく歩いたが小屋のようなものも人も見当たらなかった。

九郎は急に不安を覚え、慶の許へ引き返してきていた。

まだ、意識は戻っていない。
九郎は服の切れ端に雪を包むと、手のひらで雪を溶かし、軽く絞って弁慶の顔を拭ってやった。
足についている血の跡もできるだけ拭った。…見ていられなかった。

…どうしようもない焦りが生まれ始める。
せっかく共にいられる世界に生まれたのに、また弁慶を亡くすのか。
二度目は耐えられそうにないぞ…俺は。
九郎の目から涙がこぼれ落ちた。





 覚醒3へ



 
 Index 遙か3テキストリスト 設定と目次 覚醒1 覚醒2 覚醒3 Webclap

Copyright (C) 2009 Drop.. All Rights Reserved.
reusing fanarts in other websites w/o permission is strictly PROHIBITED*** click here/ OFP